よーんなー沖縄

これは以前勤めていた会社での出来事だ。

数年前の１月。いかにも本土企業のお偉いさんとお見受けされる紳士が来店され、たまたま手の空いていた私が対応したが、昼休みの混雑した時間帯で焦ってしまい、ご所望のパンフレットが２種類しか探せなかった。それらをお渡しする際に「今、お昼休み中ですか？」と訊いた。「えぇ、そうです」「申訳ございません。もう少しお時間をいただけましたら、あと２、３種類は探せますので、後ほどご連絡して宜しいでしょうか？」「えぇ、結構ですよ。春休みに家族が来た時に必要なものですから」。私は名刺をお渡しし、紳士はカウンターにあったメモに電話番号を書いた。「お名前を伺っても宜しいでしょうか？」「北原です」「それでは後ほどご連絡します」。

紳士が帰った後も忙殺されて、結局パンフレットを揃えられたのは、15:00近くになってしまった。早速メモに残された番号に電話すると「はい、那覇防衛施設局でございます」と涼しげな声の女性が出た。へー、北原さんって防衛施設局の人なんだー。「私○○の××と申しますが、北原様お願いします」「えっ？北原ですか？どういったご用件でしょうか？」。怪訝そうな彼女に事の次第を説明した。「北原がそちらへ1人で伺ったのですか？」「えぇ、お1人でしたけど…」「局長が1人でですか…」。なにっ!?キョッ、キョクチョー!?

数秒の保留後、北原局長が自ら電話に出られた。「あぁ、××さん、早かったですね。じゃ、仕事が終わったら取りに行きますから」「いえいえ、お待たせして申訳ございません。こちらからお届けします。今は事務所内も落ち着いて暇ですから」「それじゃ、急がないので、いつでも結構ですよ」。電話を切った後、私は速攻で愛車ホンダリードにまたがり、当時久米にあった那覇防衛施設局までかっ飛ばした。

那覇防衛施設局入口にある警備員詰所に用件を伝えると「局長に？ちょっと待ってね。確認するから」。きっと先程の涼しげな声の女性と話しているに違いない。「えっとね、後で秘書の方が取りに来るから、こちらで預かっておきましょうね」「それでは宜しくお願いします」。

今朝の琉球新報朝刊で、元那覇防衛施設局長の北原氏が防衛施設庁長官に就任されたという記事を読み、以上のことを思い出した。組織のトップに立つというのは、さぞかし窮屈だろうと察せられる。ましてや沖縄で防衛施設局の局長ともなれば尚更だ。窮屈な立場にいる人程、そのストレスで内外に威張り散らすことも多いが、北原氏は完璧なる紳士だった。

沖縄の空の下、北原巌男様の防衛施設庁長官ご就任を心からお慶び申し上げます。